
池田町および池田町教育委員会は、5月23日(土)に須波阿湏疑(すわあづき)神社境内にて、「能楽の郷 池田 皐月薪能」を開催した。今回は、池田町と石川県輪島市名舟町の民俗芸能交流会や、大蔵流狂言、人間国宝を招いての能などが披露され、約400人の観客を魅了した。
観客を魅了した荘厳な能・狂言


能舞台の周囲にかがり火を焚いて演じる「薪能」(今回は風のため火入れは中止)
池田町の薪能は、2022(令和4)年に四半世紀ぶりに復活して以来、毎年実施されている。2025(令和7)年は荒天のため中止となったが、今年は無事に県内外から多くの観客を迎えての開催となった。当日は時おりの強風に配慮し、薪能の象徴でもあるかがり火の火入れは中止となったものの、神社の境内に設けられた舞台で演じられる能・狂言は、幻想的で荘厳な雰囲気に包まれた。
地域の誇りを胸に舞う民俗芸能交流会
第一部の「民俗芸能交流会」では、2つの貴重な伝統芸能が上演された。
まず、福井県池田町で約800年にわたり受け継がれてきた国指定重要無形民俗文化財「水海の田楽・能舞」が披露された。

上演されたのは、荒ぶる神々を鎮めて世界を清める田楽「あまじゃんごこ」と、

夫婦の和合と長寿を祝福して国の平安を寿ぐ能舞「高砂(たかさご)」だ。


続いて、石川県輪島市名舟町で400年以上の歴史を誇る県指定無形民俗文化財「御陣乗太鼓(ごじんじょだいこ)」が上演された。人口約250人の漁村に受け継がれるこの郷土芸能は、1577(天正5)年、上杉謙信の軍勢が名舟に攻め込んできた時に、鬼や亡霊の面をつけて太鼓を打ち鳴らす奇襲で追い払ったことを由来とする。
演者たちは会場の熱気に包まれながら、それぞれの地域の誇りを胸に、力強い舞と迫力ある演奏を披露し、観客を魅了した。
人間国宝と名手による至高の能・狂言
第二部の能・狂言の「皐月薪能」では、かつての越前猿楽とも深いゆかりを持つ地である京都から、名手たちが招かれた。


狂言には大蔵流の茂山宗彦(しげやま もとひこ)氏が「寝音曲(ねおんぎょく)」、

人間国宝・金剛永謹さんが演じた「山伏」
能には金剛流二十六世宗家であり人間国宝の金剛永謹(こんごう ひさのり)氏が「車僧(くるまぞう)」に出演。闇夜の中に照らし出される幽玄の舞台で、卓越した至高の芸が次々と披露され、会場は大きな感動に包まれた。

能・狂言で使用した面は、池田町主催の「第22回全国能面公募展」に出品された作品から選ばれたもの
また、今回の能・狂言の演目では、池田町で開催された「第22回全国能面公募展」の優秀作品2面が実際に使用された。池田町の能面公募展は、優秀作品が主要流派の実際の舞台で使用されることから、現代の面打ち師(能面作家)にとっての登竜門となっている。

今回使用されたのは、写し面の部最優秀賞の能面「大癋見(おおべしみ)」(田中徳平さん作)と、

審査員特別賞の狂言面「空吹(うそぶき)」(清水充子さん作)である。
自分の制作した能面が人間国宝らの舞台を彩る機会となり、作家にとっても感動的な舞台となった。
関連イベントやエコキャンドルで賑わう境内
薪能の当日は、上演が始まる前から会場が大いに賑わいを見せた。

関連イベントとして、来場者が能の文化に触れられる「変身・能役者体験」や、

応募作品が一堂に会する「全国能面公募展 作品展」が開催された。


また、会場には池田町の食や木の魅力を存分に楽しめる物販店が軒を連ねたほか、

お茶を楽しめる茶道の野点(のだて)席も設けられた。

さらに、上演後は、池田町の青年団をはじめとする町民が廃油から手作りした「エコキャンドル」が使用された。キャンドルの灯りが神社の参道を優しく照らし出し、終幕後の境内にさらなる幻想的な雰囲気を演出していた。
800年の伝統を未来へ受け継ぐ「能楽の郷」

薪能はもともと、鎌倉時代に奈良の興福寺で始まったとされている、能舞台の周囲にかがり火を焚いて演じる能楽である。

池田町は「あたりまえをたやさないまち」を掲げ、約800年の歴史を持つ「能楽の郷」としての伝統を守り続けている。池田町町長の杉本博文氏は「人々が共同して暮らす小さな社会だからこそ、人々が関わりあえる、相互扶助が生きるまちでありたいと願っています」とコメントを寄せた。池田町と教育委員会は、これからもこの日本の文化を大切に継承していく意向だ。
天候による中止を挟み、多くの観客を迎えて無事に開催された今年の「能楽の郷 池田 皐月薪能」。未来へ向けて継続される池田町の今後の取り組みにも注目だ。
■「能楽の郷 池田 皐月薪能」概要
開催日:5月23日(土)
会場:須波阿湏疑神社境内
住所:福井県今立郡池田町稲荷13-1
詳細:https://www.e-ikeda.jp/event/p004641.html
(Kanako Aida)